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OpenShift Commons Gathering、AWSがスポンサードした理由とは?

2022年9月1日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
KubeCon+CloudNativeCon EU前日開催のOpenShift Commons GatheringsからAWSとMicrosoftのセッションを紹介。

KubeCon+CloudNativeCon EUの前日に開催されたOpenShift Commons Gatheringsだが、これまでRed Hatがスポンサーとして主催していたこのイベントに今回はAWSがスポンサーとして加わった。今回の記事では、そのAWSとMicrosoftのセッションを紹介したい。

Red Hat OpenShift Service on AWS

AWSとOpenShiftの解説を行うのはAWSのプリンシパルエンジニア

AWSとOpenShiftの解説を行うのはAWSのプリンシパルエンジニア

AWS上でマネージドサービスとして提供されるのは、Red Hat OpenShift Service on AWS(略称、ROSA)、一方MicrosoftとRed Hatが共同開発を行ったAzure上のサービスはAzure Red Hat OpenShift(略称、ARO)とそれぞれ呼ばれるサービスとなる。AWSとMicrosoftはそれぞれマネージドのKubernetesをElastic Kubernetes Service(EKS)、Azure Kubernetes Service(AKS)として提供している。しかし、オンプレミスでのOpenShiftが無視できない規模でユーザーを獲得していることから、競合するよりもOpenShift自体を自社のパブリッククラウドサービスの上で統合した形で顧客にアピールしたいという思いもあるのだろう。

AWSのセッション:

パブリッククラウドが広大な土地を提供する地権者だとすれば、その上で地権者が建設したプロプライエタリーなショッピングモールに入居者を誘い込むだけではなく、すでに顧客が自分の土地に自分で建てた店舗の仕組みを持ち込ませて同じように使わせたいというのは当然の流れだろう。顧客がオンプレミスのOpenShiftを使い慣れているのであれば、同じ使い勝手、運用でハイブリッドクラウドにしたいと考えるのは自然だ。

パブリッククラウドがオンプレミス側に拡張する試みとしてはAWSがOutposts、AzureがAzure Stack、そしてGCPがAnthosというプラットフォームを持っている。どれも独自のパブリッククラウドの延長であり、囲い込みの発想からは逃れられない。AWSはEKS AnywhereというAWS版Kubernetesをオンプレミス側に展開する仕組みも提供しているが、それでもEKSの延長だ。エンタープライズがオープンソースソフトウェアを選択する理由のひとつにベンダーにロックインされたくないことが挙げられるが、オープンソースのOpenShiftをそのままパブリッククラウドに延長できれば、少なくともコアの部分はロックインされることはなくなると言えるだろう。

AWSが今回のスポンサーとして参加する理由に関しては特にコメントは取れなかったが、Microsoftがセッションを持っていたことも含めて、パブリッククラウドのトップベンダー2社にとってOpenShiftが無視できない存在であることは間違いなさそうだ。

顧客が要求するのはインフラではなくアプリケーションであると説明するJavier Naranjo Matasan氏

顧客が要求するのはインフラではなくアプリケーションであると説明するJavier Naranjo Matasan氏

このスライドでは顧客はインフラストラクチャーが欲しいのではなく、その上で実行されるアプリケーションが欲しいということ、必要に応じてスケールできること、分離された環境でセキュアであることなどを挙げて、インフラの提供者としてはあくまで黒子としてビジネスの価値を生み出すのはアプリケーションであることを強調した。

モダンなアプリケーションの特性についても解説

モダンなアプリケーションの特性についても解説

ここでモダンなアプリケーションについても解説を行った。スケールすること、高速であること、グローバルに展開できること、巨大なストレージを用意できることなど、AWSを始めとするメガクラウドが得意としていることを列挙した形だ。

アプリケーションをモダナイズする戦略を説明

アプリケーションをモダナイズする戦略を説明

ここでは利用しているアプリケーションをモダナイズする方法として、DIYでやっている部分を減らし、AWSにリフトアンドシフト、その後で残ったアプリケーション自体をモダナイズする段階的な方法を示した。

CIOは運用やメンテナンスではなくアプリケーションに時間を使って欲しいと思っている

CIOは運用やメンテナンスではなくアプリケーションに時間を使って欲しいと思っている

またデベロッパーが使っている大部分の時間が運用やメンテナンスに使われているとして、CIOは本来のビジネスの価値を生み出すアプリケーションにより多くの時間を使って欲しいと思っていると説明した。

Kubernetesを自前で組み立てて運用するのはタイヘンというイラスト

Kubernetesを自前で組み立てて運用するのはタイヘンというイラスト

このスライドではKubernetesを自前で環境構築して運用するのはとても手間がかかることを表しており、オープンソースソフトウェアを自社のエンジニアだけで構築運用するのは多くの労力を要するというAWSもRed Hatも納得するメッセージを伝えた形になった。素のKubernetesではなくRed Hatが検証して組み上げたOpenShiftを顧客に勧める発想と意図は同じだろう。

OpenShiftとAWSでオンプレからマネージドまですべてをカバー

OpenShiftとAWSでオンプレからマネージドまですべてをカバー

このスライドでは自社で運用管理するオンプレの環境からマネージドの環境まで、顧客のすべてのニーズを満たせることを訴求した。

ここまで、運用に時間を使わずにビジネスの価値を生み出すアプリケーションに時間を使おう、OpenShiftとAWSならそれが可能であるというメッセージを繰り返し伝えた後に、デモとしてAWSの上でOpenShiftを操作する部分をSai Vennam氏に担当をスイッチした。

デモを行うVennam氏

デモを行うVennam氏

Vennam氏はAWSを操作して実際にクラスターがデプロイされるところ、CloudWatchを使って可視化するところなどを見せた。

CloudWatchで稼働状況を確認

CloudWatchで稼働状況を確認

その後、AWSでコンテナーを実行する際の選択肢としてEKSやECS(Elastic Container Service)、EKSがいわゆるDIY的な位置付けなのに比べて、ROSAをターンキーシステムとして位置付けていることを示すスライドで説明した。

ターンキーシステムという位置付けのOpenShift on AWS

ターンキーシステムという位置付けのOpenShift on AWS

そしてEKSとの違いを2枚のスライドで解説した。AWSのイベントではなくあくまでもスポンサーとしてゲストの立場でセッションを持っているが、OpenShiftのコントリビューターやユーザー、そしてこれからOpenShiftを使おうとしているエンドユーザーにとっては2つのコンテナプラットフォームの違いを理解するには良いイントロダクションだったように思える。

EKSの説明

EKSの説明

ROSAの説明

ROSAの説明

柔軟さが売りのEKSに対して、ROSAはあくまでもAWS上に統合された使い勝手、運用や監視機能を提供するターンキーシステムであるという区別をはっきりと説明した。

そしていかにもAWSらしく「誰が何に責任を持つのか?」というスライドを使ってユーザーが責任を持つ部分、Red Hat、AWSがそれぞれ責任を持つ部分を説明した。

制御と実行からサポート、課金の窓口までの責任区分を解説

制御と実行からサポート、課金の窓口までの責任区分を解説

このスライドではクラスターのコントロールプレーン、データプレーン、コンピュートの部分の選択と監視、そしてサポート、課金の窓口に至るまで誰が責任を持つのかを解説している。ユーザーが自力でOpenShiftをAWS上に構築した場合、サポートと課金はRed Hatとなるが、ROSAではRed HatとAWSが共同でサポートを行い、課金はAWSから一貫して実施されるということはすでにAWSを使っているユーザーにはありがたいだろう。またサポートについても、問題がAWSとOpenShiftのどちらで起こっているかなどの切り分けを行うためにも2社が共同で行ってくれるのはあるべき姿だ。

課金の原則を解説

課金の原則を解説

このスライドではどのようにコストが積み上がるのかを解説したもので、至極当然だが、OpenShiftのサービスにかかるコストはRed Hatが担当し、インフラストラクチャーにかかる部分、そしてCPU、メモリ、実行時間、データ量などをAWSが課金して合計するという方式だ。ここまででAWSのセッションは終了した。

MicrosoftのAzure Red Hat OpenShift

スポンサーであるAWSのセッションが25分という長さだったのに比べてMicrosoftのセッションは10分というライトニングトークの枠で行われた。

Azure Red Hat OpenShiftを紹介するMohammad Nofal氏

Azure Red Hat OpenShiftを紹介するMohammad Nofal氏

Microsoftのセッション:

非常に短い時間の中でAzure Red Hat OpenShiftの概要を紹介したNofal氏だが、ここでもMicrosoftとRed Hatが共同で開発運用していること、顧客はアプリケーションの開発に集中できることなどを説明した。

アプリケーション以外はRed HatとMicrosoftが責任を持つARO

アプリケーション以外はRed HatとMicrosoftが責任を持つARO

ここからユーザー事例を紹介。Alpegaはスペインが本社の運送業界向けのSaaSアプリケーションを提供するベンチャー、Andreaniはモーターサイクルなどのサスペンションを製造するメーカーだ。

Alpegaの事例

Alpegaの事例

Andreaniの事例

Andreaniの事例

短い時間ながらも的確なメッセージで「AWSだけではなくMicrosoftもOpenShiftにコミットしている」ことが伝わる内容となった。Nofal氏はこの日最後のAMA(Ask me Anything)セッションでも回答者として参加し、パブリッククラウドがOpenShiftにコミットする利点などを回答していた。Nofal氏の回答がAWSの担当者よりも好評だったので、セッションの後に会話したところ、AWSでTechnical Account Managerとして約4年間働いた後にMicrosoftのAzureチームに移ったので「AWSの良さも弱点もみんな知ってるよ」とのことだった。

OpenShiftというパブリッククラウドにとってみれば、オンプレミスにロックインさせるプラットフォームを敢えて自社のインフラストラクチャーに引き込んでサービスとして提供することで結果的にユーザーには選択肢を与えることに繋がっているのはユーザーにとっては良い傾向だろう。パブリッククラウドを敵と捉えるのではなく、オンプレミスのデータセンターにとっての補完的なサービスとしてAWSをスポンサーに迎えたRed Hatの意図が見えたセッションとなった。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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